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家賃滞納での「追い出し」条項、最高裁は違法と判断も 弁護士は「借りる側への影響は限定的」と指摘
2022年12月19日 09時52分

賃貸住宅の借り主が家賃を2カ月以上滞納するなどして連絡も取れない場合に、部屋を明け渡したとみなす家賃保証会社のいわゆる「追い出し条項」の是非が争われた訴訟で、最高裁は12月12日、消費者契約法に基づいて、条項は違法だとして、条項の使用差し止めを命じた。

家賃保証会社は、借り主が賃貸住宅へ入居する際に家賃保証に関する契約を結び、家賃滞納時に家賃を家主側に代わりに払ったのち、借り主に請求する。

1審・大阪地裁は同条項は違法であるとして差止めを命じる一方、2審・大阪高裁は同条項には「相応の合理性がある」として適法と判断していた。

賃貸住宅へ入居する際に家賃保証会社を利用するケースが近年増えており、報道などによると全賃貸取引の約8割で家賃保証が使われているとされる。

同じような条項を設けている家賃保証会社は見直しを迫られそうだが、今後賃貸住宅を借りる人への影響はどうなるだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

賃貸住宅の借り主が家賃を2カ月以上滞納するなどして連絡も取れない場合に、部屋を明け渡したとみなす家賃保証会社のいわゆる「追い出し条項」の是非が争われた訴訟で、最高裁は12月12日、消費者契約法に基づいて、条項は違法だとして、条項の使用差し止めを命じた。

家賃保証会社は、借り主が賃貸住宅へ入居する際に家賃保証に関する契約を結び、家賃滞納時に家賃を家主側に代わりに払ったのち、借り主に請求する。

1審・大阪地裁は同条項は違法であるとして差止めを命じる一方、2審・大阪高裁は同条項には「相応の合理性がある」として適法と判断していた。

賃貸住宅へ入居する際に家賃保証会社を利用するケースが近年増えており、報道などによると全賃貸取引の約8割で家賃保証が使われているとされる。

同じような条項を設けている家賃保証会社は見直しを迫られそうだが、今後賃貸住宅を借りる人への影響はどうなるだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

●「消費者の利益を一方的に害する」条項は違法と判断

——今回の最高裁判決の概要を教えてください。

今回の最高裁判決は、保証会社「フォーシーズ」が保証委託契約に用いている約款のうち、以下の2つの条項について、消費者契約法10条に違反して無効と判断したものです。

(1)「保証会社は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3カ月分以上に達したときは、無催告にて原契約(賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約)を解除できるものとする」

(2)「(a)賃借人が賃料等の支払を2カ月以上怠り、(b)保証会社が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡が取れない状況にあり、(c)電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から建物を相当期間利用していないものと認められ、(d)建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存する場合には、賃借人が明示的に異議を述べない限り、保証会社が、建物の明渡しがあったものとみなすことができる」

消費者契約法10条は、民法などの法令中の任意規定(特約がない場合に適用される一般的な規定)による場合に比べて、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項は無効とする、と規定しています。

——無効と判断した理由は何でしょうか。

今回の最高裁判決をみると、条項(1)について、「原契約の当事者でもない被上告人(保証会社)がその一存で何らの限定なく原契約につき無催告で解除権を行使することができるとするものであるから、賃借人が重大な不利益を被るおそれがある」と指摘しています。

また、条項(2)についても、原契約が終了している、すなわち既に解除や解約により賃貸借契約が終了している場合だけでなく、原契約が終了していない場合でも、保証会社が一方的に建物の明渡しがあったものとみなすことができる条項であるとし、「賃借人は、本件建物に対する使用収益権が消滅していないのに、原契約の当事者でもない被上告人(保証会社)の一存で、その使用収益権が制限されることとなる」と指摘しています。

これらの指摘から、今回の最高裁判決は、条項(1)や条項(2)が、賃貸人ではなく保証会社がイニシアチブを取って、賃貸借契約を解除したり、建物の明渡しがあったものとみなしたりできるという点に着目し、消費者の利益を一方的に害すると判断していることが分かります。

●「約款は各社さまざま」同じような条項、他社では意外と存在しない?

——家賃保証業界への今後の影響はどうでしょうか。

私の方で、他の大手保証会社の約款をいくつか見てみましたが、今回の最高裁判決のように、賃貸人ではなく保証会社が賃料滞納を理由に賃貸借契約を解除できるという条項は見当たりませんでした。

原契約がいまだ終了していない状態でも、夜逃げ状態にあることを理由に保証会社において明渡しがあったとみなせるとの規定については、類似の例が1件ありました(賃借人から解約の申し出があるとみなせるとするもの)。

実のところ、保証会社各社の約款内容はさまざまであり、あまり統一はされていません。

原告の「消費者支援機構関西」は今回、特に強硬な内容と判断した本件保証会社の条項について、差し止めの裁判を起こしたのだろうと思います。

確かに、条項(1)について、賃貸人が契約解除の意思表示をしていないのに、賃貸借契約の当事者でもない保証会社が解除するという条項(1)には違和感があります。

また、(2)についても、賃貸人による契約解除や賃借人による解約申入れがないのに、保証会社が、法的手続を省略して、建物の明渡しがあったものとみなしてしまう(おそらく、家財道具等は撤去してしまうのでしょう)というのもやり過ぎであるように思います。

今回の判決は最高裁判決であることから、大きく報道され、それによる保証会社に対する萎縮効果は生じると思いますし、そのあたりも消費者支援機構の狙いだろうとは思います。

ただ、冷静に考えると、今回無効とされた条項は、多くの保証会社が当たり前のように用いている条項とはいえないと思われます。

保証会社は、今回の最高裁判決を踏まえて、自社の約款を見直し、行き過ぎの部分がないかを点検し修正することが求められますが、保証会社の経営が大きく傾くような話ではないのでは、と思います。

●「市民が賃貸物件を借りにくくなるほどの影響はないのではないか」

——賃貸住宅を借りる側への影響はどうでしょうか。

一部、今回の最高裁判決の影響で、保証会社の経営が圧迫され、かえって一般市民が賃貸物件を契約しにくくなるのではないか、という意見も見られます。

しかし、私見としては、かなり強硬な内容の条項が無効と判断されたにとどまり、各保証会社の約款内容はさまざまであって、約款の見直しの動きは出るでしょうが、一般市民が賃貸物件を借りにくくなるほどの影響はないのではないか、と思います。

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